コモンズ研究のための法概念の再定位 : 社会諸科学との協働を志向して(<特集>市民社会論の法律学的射程)
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概要
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本稿は, 「法」を社会学する学である法社会学が, いかにしたら「社会」そのものの認識に寄与する研究になり得るか, を探求することを目的とする. 第一に, 「市民社会」の歴史社会的構造を規範の源泉とし, 「市民社会」史研究と協働していた市民法論が, 最近の歴史研究の進展によって「市民社会」の多様化・多層性・虚構性が明らかになるに連れ, 「フィクションとしての法」そのものを価値の源泉とするようになり, 社会科学としての貢献が不可能になったことを批判的に論じる. 第二に, 法学と社会諸科学との協働を再生するためにコモンズ論を取り上げ, それを法学的観点から批判的に読み解きつつ, 質の高い社会の分析を可能にするための新たな法の概念を提示する. その法の概念は, 権利義務関係の法, 組織内の法, 政策的法という三つの層から構成される. 第三に, これらの法の概念を, 児童公園というコモンズの性質を持つ財の分析に応用しながら, あるべきガバナンスの仕組みを提示する. コモンズ論は, 山野海川の慣習的権利に限られず, 都市の共同の場での新たなルールづくりに活かされることでそのポテンシャルが最大限発揮され, 法学と社会諸科学との新たな協働の可能性が拓かれるというのが本稿の主張である.This Paper will aim how the Sociology of Law can contribute to recognition of the Society. In the first place, I argue critically that the latest Civil Law Theory became impossible to contribute to recognition of the Society. In the second place, the Common's Theory is taken up in order to reproduce the Collaboration with Legal Science and Socials Sciences. The new Concepts of the Law for enabling analysis of Society are shown. These Concepts of the Law are three, called the Rights-and-Duties-related Law, the Law in an Organization, and the Policy's Law. In the third palace, these Concepts are applied to Analysis for the Governance of Children's Park which have Common's Character.
- 2009-03-23
著者
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