荷風のあめりか
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概要
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欧米に留学した日本の近代作家にとって、海外体験は自国の皮相な近代化を見つめ直す契機となった。それは日本を<外部>の視点からとらえ直すことであり、同時に日本にも西洋にも帰属し得ない<他者>としての自分を認識する過程でもあったと考えられる。言い換えれば、それは拠って立つべき一切のものを失ったときに立ち現われてくる、自分自身の資質に目覚める自己確認の旅であった。永井荷風は明治期のエリート官僚の経歴を持つ父の意に従う形でアメリカへ赴いたが、彼がそこで発見したものは、異文化という<外部>と、それまで帰属していた<内部>のどこにも存在しない自分自身の内なる世界であった。彼は現実から敢えて身を離し、自ら創り出した<闇>の世界へと異界探訪の旅に赴く。小論の目的は、『あめりか物語』を通して荷風の自己確認の過程を辿り、あわせて彼にとっての異文化体験の意味を明らかにすることである。
- お茶の水女子大学日本言語文化学研究会の論文
- 1992-07-25
お茶の水女子大学日本言語文化学研究会 | 論文
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