神々に杞る人形: 民俗事例と文献史料を中心として
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概要
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人形や馬形などの形代については、近年古代遺跡の出土例によって関心事となっている。遺構・遺跡における出土状況からの検討によっひとがたうまがたてその人形や馬形のもつ機能的部分へとアプローチしょうとする傾向にある。ただ、この人形や馬形などが呪術的要素をもつものであることはすでに多くの先学諸氏によって提示されていて、呪術機能をもつことは一般的に周知されている。このように古代・中世の遺跡や遺構から出土する人形や馬形などの所謂形代の機能を検討する途に、多くの課題が内在することも周知されているが、基本的に〈形代が出土した場所が、かならず祭杷跡・遺構であったのか、否か〉という点も含めて考えていかねばならないであろう。一方、これと同様に民俗事例の形代についても、多くの課題を含んでいることはいうまでもない。たとえば、現存する形代をもって、これがどのように機能しているのかという点を除くと、その歴史的視点で検討を加えること、どのようにして神々に杷る形代であるのかあるいはあったのかということ、そして古代・中世の遺跡から伴出する形代と近現代において現存する形代とその接点を究明することなどは、民俗の研究においても目前に横たわっている問題点であろう。したがって、ここではこのことを念頭におきながら、民俗事例にみる形代の使用例に焦点を絞り、古代の形代を検討していくことにするが、とくにここでは人形の諸相を紹介しながら、民俗事例における人形の存在形態つまり、人形の機能する実態を考えていくことにしたい。さらに、この民俗事例の紹介と併せて、史料事例についても時期を遡りながらその変遷について考えていくことができればと考えている。
- 奈良大学文学部文化財学科の論文