血清中のらい菌フェノール性糖脂質の固相法による抽出と高速液体クロマトグラフィーによる定量
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概要
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1982年にHunterらによってらい菌からフェノール性糖脂質(PGL-1)が単離,構造決定されて以来その血清学的性質が多くの研究者によって研究されてきた.特に糖鎖の化学合成が成功した事によって多数の血清試料について詳細に検討することが可能になった.その結果PGL-1の糖鎖,特に三糖全体を合成し,血清アルブミン(BSA)に結合させた合成抗原(NT-P-BSA)が抗PGL-1抗体を定量することでらい歯の感染を血清学的に診断するための道具として,また治療中の患者に対する化学療法の効果のモニタリングの道具として極めて有用であることが明らかになり,現在ではこの合成抗原を用いたELISAやゼラチン粒子凝集法が実用化されている.しかし多くの患者のなかには血清中の抗体価と臨床症状とが必ずしも一致しない例が見受けられる.また抗PGL-1抗体の抗体価とその他の指標例えば菌指数(BI)等とは相関関係がほとんどない.さらに化学療法の際には抗体価の低下よりもかなり早くPGL-1の量が低下するという報告もある.従って抗体価の定量と同時に抗原であるPGL-1も定量する事が望ましい.血清中のPGL-1を定量するにはなんらかの方法でPGL-1を抽出する事が必要で,主として凍結乾燥した血清からクロロホルムーメタノール混液で抽出している.定量は抽出物を塗布したセルロース膜を用いたDOT-ELISAによって行なっている.しかしこの抽出法は非常に手間がかかり多数の検体を扱うには適当でないし抽出物が多くの爽雑物を含んでいて化学的な定量が難しい.またPGL-1の定量法であるDOTELISAは完全な定量法とは言えず半定量である.本報告では多数の検体を扱うのに適した簡便な抽出法の検討と高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるPGL-1の定量について述べる.
- 奈良大学の論文
著者
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