児童期の自己の発達と小学校の教育実践─作文(綴方)・スピーチ活動の心理学的な意味づけ─
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概要
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近年,児童期の子どもたちの発達をめぐって,子どもの「自己の育ち」が重視されてきている。本論文では,このような自己の育ちを小学校で実践される活動から考察するための基礎的な議論を,発達心理学の知見をふまえつつ行う。まず,発達心理学における,子どもの自己をめぐるいくつかの理論的枠組みから,子どもの自己の育ちを「子どもが自分の経験を物語る」ことをとおして検討できることを述べる。次に,小学校で,子どもが自分の経験や考えを表現する教育実践として明治期から行われてきた作文(綴方)やスピーチ活動(話し言葉の指導)において,「子どもの自己」が継続して重要なテーマとなってきたことを論じ,これら実践上の課題が心理学の問題意識と共通していることを考察する。最後に,今後心理学からこれらの実践にアプローチする際に重視すべき点を,実践の特徴と対応させつつ示す。Compositions (Saku-bun or Tsuzuri-kata) and speech activities, in which children present their experiences or thoughts, have been widely observed in Japanese elementary schools. In this paper, we will discuss these practices in elementary schools based on psychological perspectives for the development of children’s self. Historically, these practices appear in Meiji period, and in the middle of Meiji period, ‘self of child’ was already one of important concerns in these practices. However, discussions in psychology about in what way these practices contribute to the development of children’s self are not enough still now. We point out that, when we consider the theoretical importance of ‘personal narrative’ for elaborating our autobiographical memories or self-representations, and for positioning ourselves in interpersonal relationships, these practices appear as the important field of self-construction. For further investigation, it is indispensable to focus on dynamic nature of these activities where socially shared expressions as cultual tools are used for presenting the children’s self.
- 2010-09-30
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