ブタ卵子の細胞質内カルシウムイオン蓄積量に及ぼす成熟および卵丘細胞の影響
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概要
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哺乳動物の卵子細胞質内におけるCa^<2+> の蓄積は、胚発生開始シグナルとして重要な受精時の卵子細胞質内Ca^<2+> 濃度 ([Ca^<2+>]i) 上昇に重要であり、その蓄積量は成熟中に変化すると報告されている。本研究では、現在までに報告のないブタ卵子におけるCa^<2+> 蓄積量について、成熟の前後での変化を検討した。また成熟中の卵子内Ca^<2+> 蓄積量に対する卵丘細胞の影響を検討するために、卵丘が付着した卵子 (COC) と卵丘細胞を除去した卵子 (DO) の成熟後のCa^<2+> 蓄積量も同様に検討した。Ca^<2+> 蓄積量の測定は、各試験区の卵子にCa^<2+> 蛍光指示薬であるFura-2AM をとりこませた後、Ca^<2+> 不含培養液内においてカルシウムイオノフォア、A23187 で処理し、卵子細胞質ゾル中に放出されたCa^<2+> 量をR 値として記録することによった。A23187処理後、各試験区の卵子細胞質にはCa^<2+> 濃度の一過性の上昇が観察され、そのピークにおけるR値の平均は、未成熟卵子が7.58( N=14) 、成熟卵子は5.14( N=10)となり、両者の間に有意な差が検出され(p < 0.05) 、成熟中に卵子内Ca^<2+> 蓄積量は減少する傾向が観察された。またCOC 由来成熟卵子のピークにおけるR 値は4.86( N=12) 、DO 由来の成熟卵子は4.71( N=13) となり、有意な差は観察されず、卵丘細胞の成熟中の存在は、成熟後のCa^<2+> 蓄積量に影響しないことも示された。以上の結果より、ブタ成熟卵子における受精後の[Ca^<2+>]i 上昇は、成熟過程におけるCa^<2+> 蓄積量の増加がなくても起こり得ることが明らかとなり、さらに成熟中に卵丘細胞がない状態であっても、発生開始に十分な細胞質内Ca^<2+> 蓄積量が保たれることが明らかとなった。
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