間接単調性と痛みなき改革
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概要
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論文ある大きな枠組みの中に,いくつかの組織があったとしよう。それらの組織の間の関係としては,(1)(ほとんど)独立である,(2)部分的に密接な関係を持つ,(3)一体化していると言って良いほど全般的に密接な関係を持つ,といったパターンが考えられる。組織間に十分な補完性が期待できるならば,(1)よりは(2),(2)よりは(3)が利得上有利なはずである。それにもかかわらず(1)や(2)のような現状があるということは,代替的あるいは競争的な部分もあり,調整が困難だということであろう。本論で考察する対象は,このような,補完性の観点から見て不完全な状況である。完全に補完的な状況であれば単調比較静学が成立することが知られている。これに対し,上記のような不完全な状況でも,間接単調性という類似の帰結が導かれること,および,そのための条件を明確にしたことが主たる結果である。その応用として,企業内のセクショナリズムを溶解させるにはどうしたら良いか? より一般的に,より多くの補完性の利益を実現するための組織改革を痛みなく進めるにはどうしたら良いか? 自発的なねじれ提携がなぜ発生することがあるのか? ブロック経済の壁はどうしたら崩すことができるのか?といった問題を補完性の観点から簡単に考察する。間接単調性が満たされて応用が成功する条件として,オリジナリティあるいは多様性が重要な要件となることが強調され,それらが補完性強化において果たす役割が明確にされる。