シュタイナー学校の教員養成システムに関する研究 -歴史的展開とボローニャ・プロセスに伴う再編-
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概要
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2004年秋、当時のドイツ大統領ラウ(Johannes Rau,1931-2006)は、シュタイナー学校(ヴァルドルフ学校) 周年記念行事における挨拶で、以下のように述べている。「 教育は一つの芸術です。教育とは、自由な自己決定に向けて若者の人格的発達を促進するという芸術なのです。教育者は子どもたちに付与されている能力や才能を見極めて、それが花開くよう手助けしなければなりません。このことは、ソクラテスが産婆術と名付けたものとほぼ同じものです。つまり、教育は一種の出産補助なのです。従って、教育は伝統や知識の伝達に限定されるべきではありません。ヴァルドルフ教育学の最も重要な功績、それは若者に対する要求がころころ変わることに惑わされることなく、一人ひとりの子どもの中にある特別なものを見極め、それを促進する時にのみ、教育は成功することができる、というこの点を堅持していることにあると思います。こうした教育を通して、子どもははじめて人間となることができるのです。」1)教育という営みは、子どもが「自由な自己決定」を行うことができる「人間」となるための「出産補助」であるという意味で、「一つの芸術」(eine Kunst)に他ならないこと、そしてこうした「芸術」としての教育を担う教育者は、単なる「伝統や知識の伝達」を越えた役割、つまり子ども一人ひとりの中に秘められた能力や才能を見極め、それが花開くよう手助けするという困難な役割を果たす必要があること。このラウ大統領の挨拶の一節は、シュタイナー教育(ヴァルドルフ教育)の究極的目的とそこでの教育者の極めて重要な役割とを端的に述べたものと言えるだろう。実際、シュタイナー学校は、その思想的創始者であるルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner, )が特徴づけた「教育芸術」(Erziehungskunst)としての教育を実践する学校であり、この学校の教員(とりわけ第8学年までの担任教員)は「教育芸術家」(Erziehungskünstler)としての重要な位置と役割とが期待された存在なのである。年の最初のシュタイナー学校の創設以来、今日まで約90年間にわたって、如何にして「教育芸術家」としての教員を養成し確保するかが、シュタイナー学校運動(ヴァルドルフ学校運動、Waldorfschulbewegung)の中心課題であり続けているのはこのためである。
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