札幌市における湿性沈着量の動向について
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概要
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札幌市では降水中のpH, 電気伝導率, SO42-等の陰イオン, Ca2+等の陽イオンの各種イオン濃度を把握するため, 平成元年度から3地点で酸性雨モニタリングを実施して多くのデータを得ている。今回, 平成14年度までの年度別, 季節別データをもとにH+沈着量, 推定H+沈着量, NO3-/非海塩由来(nss)-SO42-とNH4+/nss-Ca2+の当量濃度比等を用いて, 湿性沈着の動向を検討したので報告する。年間のH+沈着量は芸術の森(南区)では14~43mmol/m2, 衛生研究所(白石区)では8.6~19mmol/m2, 中央(中央区)では2.8~ 15mmol/m2の範囲にあった。NO3-とnss-SO42-から計算した推定H+沈着量は芸術の森では41~81mmol/m2,衛研では41~68mmol/m2, 中央では63~115mmol/m2の範囲にあり, 中央が芸術の森より上回っているが, 実測のH+沈着量は中央が下回っており, この結果から市内でも地域によりH+の中和に要する塩基成分量が異なっていることが示唆された。NO3-/nss-SO42-当量濃度比は増加傾向にあり, 燃料の硫黄含有率の低減化や自動車排ガスの増加により, 降水中の酸性化成分としての窒素酸化物の寄与が大きくなったと考えられる。また, 主な塩基成分にはCaCO3とNH3があり, NH4+/nss-Ca2+の当量濃度比も増加傾向にあった。モニタリング当初は車粉から起因したと思われるCa2+の寄与が大きく, 次第に自動車排ガス由来と思われるNH3の寄与が大きくなったと考えられ, 今後も車粉の減少や自動車排ガスの増加により, NH3の寄与がさらに大きくなると予想される。
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