林分施業法の研究--東京大学北海道演習林における天然林施業の実験
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
東京大学北海道演習林は1899年に設立され,1907年に第1期施業案が策定されて森林施業が始まった。以来施業案の改訂毎に作業種についていろいろ検討がなされたが,その中で中心になったものが天然林施業であった。しかし1957年までは良木選抜を主体とする粗放な択伐作業を実施してきた結果,森林は質的にも量的にも低下し大きく荒廃した。そこで1958年より天然林の更生を計るため「林分施業法」の構想を第8期経営案にとり入れ,約2万haに及ぶ大規模な天然林施業実験が進められた。この実験は現在も行われているが,この間社会,経済的環境の変化に対応して経営組識の変更,施業技術の改善を計りつつ基本的にはその施業仕組を大きく変更する事なく実行してきた。その結果,重点かつ集約な施業を実施した第I作業級の択伐林分,再生林択伐林分の林分生長量は増大し,ほぼ林分更生が計られた。また補植林分,皆伐林分を林分改良することによって良好な成績を示した。一方,第I作業級よりやや粗放な施地を実施してきた第II作業級の択伐林分は,一巡施業した段階で不良蓄積の整理が不十分なため,林分生長量増大の兆しが見られず蓄積減少した。この外,択伐,補植林分の補助造林作業法が確立したこと,林道の拡充,整備によって地利級も高まり合理化作業の推進が計られる等して経済的にも大きな成果をもたらした。しかし,今後本施業法の実験を継続する当たり,主に施業技術に関する問題が生じ,ここに改めて施業組識,施業仕組,施業法等について再検討することが必要となった。それは施業実施上の実践的問題であると同時に天然林施業の理論問題でもある。筆者は,そこで施業上の主要課題として,従来の林分区分を施業の基本とする方式から更に林分を細分した林型に基づく施業法への改善を試みた。林型を類型化するに当たって,同一林型の更新状況,生長パターン,目標とする林分構造はほぼ同一であることを条件として区分の要素を従来の林分区分をベースにし,これに林相,林分構造,立木疎密度,優占林種を組み込んだ。これによって類型化された林型について,前記条件を検定したとろ天然林の生長パターンは比較的少ない林型に分類でき,かつ,林型毎のタイプはほぼ同一であることが判明し,林型区分の妥当性が証明された。これに基づき主要林型毎の施業法について検討した。また,施業の如何によって林分構造,生長量の推移を予測することも可能なった。以上の結果,林分の直径分布を基にしてその林分構成を調整する伐採木の選木方法の見通しが樹てられるようになった。次にこれまでの林分施業法の成果並びに本研究の成果を集約して,1986年から始まる第10期試験研究計画においては,より理論的でかつ,合理的な施業法の確立を目指し,経営組識,施業仕組,施業法等の改善を組み込んだ。The Tokyo University forest in Hokkaido was established in 1899. The first forest management plan was made and put into practice in 1907. Since then silvicultural systems have been examined in the periodic revision of forest management plans, with its basis being focused on natural forest management (selective cutting system). However, the forests were seriously damaged in terms of quantity and quality, because the extensive selective cutting was carried out with excessive emphasis on high quality timbers until 1957. To improve them the concept of the so called, stand based forest managerment system, was put into the 8th forest management plan in 1958, leading to large scale experiments involving an area of about 20,000 ha. In the last three decades, Though it has experienced some changes in the management organization and the inprovement of silvicultural techniques associated with the social and environmental change, the basic framework of forest management has mostly been kept unchanged.
- 東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林,The Tokyo University Forests,東京大学農学部附属北海道演習林,University Forest in Hokkaido, Faculty of Agriculture, University of Tokyoの論文