高校生の就業意識と自己意識 : 時間的展望の異なる二つの類型について
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概要
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現在の若者問題において,就業意識と自己意識の分析がバラバラに行われている状況に対する批判的な問題意識から,札幌市の高校3年生の就業意識と自己意識との関係を分析した。自己意識の因子分析からは,単一の自己アイデンティティを重視する一元型だけでなく,いわゆる「状況依存的自己」を指し示す二つの型が抽出された。就業意識の因子分析からは,従来的な,労働のなかで自己の発達を期す型も抽出されたが,第一因子は「将来展望」をもたず「マイペース」を重視するものであった。自己意識の<状況依存/一元>は,将来目標の<不明/明>を経由して,就業意識の時間的な秩序化の在り方と関わっていた。すなわち,一元型と労働のなかで自己の発達を期す型が結びついた<発達型>と,「状況依存的自己」と「将来展望」をもたず「マイペース」を重視する型が結びついた<非発達型>の二つが見出された。この<非発達型>は,未来を起点に今に関わるという労働主体的な発想をもたず,消費主体的な発想になっていた。さらに社会意識・将来意識において,<非発達型>は非常に悲観的で,不幸せ感を強くもっていた。このように,就業意識と自己意識の関係を分析することから,「時間的展望」の違いという新たな視角の重要性が示唆された。
- 北海道大学大学院教育学研究院の論文
- 2008-06-27
著者
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