タイ国と日本のコガタアカイエカの形質の変異
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概要
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現在,日本内地で日本脳炎ウイルスが蚊の体内で越冬する可能性はたいへん小さいことが証明されている.陸から遠く離れた洋上で蚊が採集されることから,コガタアカイエカが外国から日脳ウイルスを持ち込んでいるのではないかとの疑いがでている.しかし,これらのコガタアカイエカがどこから飛んでくるかを明らかにしなければ蚊によるウイルス持ち込みを立証することはできない.コガタアカイエカの産地による変異をそれぞれ明らかにしておけば洋上の蚊の産地の推定に役に立つ.そこで長崎,奄美大島,タイのチャンタブリで捕えたコガタアカイエカの形態の比較を行った.その結果,野外で採れた成虫は長崎のものが一年中最も大きく,ついで奄美大島が大きく,チャンタブリのものは気温が同じでも長崎のものより小さかった.次いで長崎とバンコクで得られたコガタアカイエカを同一条件で飼育すると,バンコクのものの方が幼虫・蛹期間は短かく,羽化成虫は小さかった.低温短日で飼育すると長崎産はすべて休眠し,濾胞は小さく吸血しないのに,バンコク産の一部のものは濾胞が大きくなり吸血し成熟卵を形成した.これらの結果は洋上で捕えた蚊から系統を作れば産地を推定することが可能であることを示している.The morphology of Culex tritaeniorhynchus of Chantaburi, Thailand, Amami-Oshima and Nagasaki in Japan were compared. Adult females collected at Nagasaki were the largest and those at Chantaburi were the smallest in any season. The results of laboratory experiments with two colonies originated from Bangkok and Nagasaki indicated that larval plus pupal period was shorter and body sizes of resulting adults were smaller in Bangkok colony than in Nagasaki colony. At low temperature and short photoperiod, all females of Nagasaki colony entered into diapause and did not feed on blood meals, while a part of Bangkok colony did not show any sign of diapause and fed on blood meals 7 to 14 days after emergence. These results clearly showed the geographical difference in morphology and physiology between populations of Thailand and Japan.
- 長崎大学熱帯医学研究所の論文
- 1984-06-30
著者
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