こし取り型摂食をする蚊幼虫における種内および種間捕食現象
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概要
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蚊の幼虫をその摂食法から分ける場合には,こし取り型(filter feeder),かじり取り型(browser)および捕食型(predator)の3型に分けるのが普通である.それらのうち,捕食型に属する幼虫は他種の蚊幼虫だけでなく同種の若令幼虫をも普通に捕食することが知られているが,こし取り型,かじり取り型に属する幼虫どうしの捕食は,一般に,特殊な条件下における異常な現象とみなされてきたために,それらの幼虫の捕食能力などについても全く調べられたことがないようであった.そこで,典型的なこし取り型に属するコガタアカイエカとシナハマダラカの幼虫の捕食能力を実験的に調べたとこら,コガタアカイエカの高令幼虫はきわめて多数の若令幼虫を捕食する能力を持っていること,我国ではコガタアカイエカとほぼ同じ水域に発生するシナハマダラカの高令幼虫もコガタアカイエカの若令幼虫を捕食する能力を持っていることが明らかになった.上述のように,この2種は典型的なこし取り型に属することからみると,殆んど全てのこし取り型,かじり取り型に属する幼虫が,こうした捕食能力を持っている可能性が大きいと思われる.従って,同種,異種の高令幼虫による若令幼虫の捕食は,これまで一般に考えられていた以上に普通におこっている現象である可能性があり,ある条件下では,個々の種の個体数調節や種間競争において一定の役割をはたしている可能性も考えられる.今後の検討を要する問題であろう.また上記の3型の定義,それら3型の進化史的な関連についても言及した.The larvae of Culex tritaeniorhynchus and Anopheles sinensis are typical filter feeders. The old larvae of the former species were shown to be potential predators for their own young larvae. They consumed as many as 800 first instar larvae per individual per day. Even when a sufficient amount of suitable food other than young larvae had been supplied, cannibalism was observed. Also, the old larvae of Anopheles sinensis were potential predators for the young larvae of Culex tritaeniorhynchus. The possible role of intra- and interspecific predation in the population regulation of filter feeding mosquito larvae and the classification and evolution of the feeding habits of mosquito larvae were discussed.
- 長崎大学熱帯医学研究所,Institute of Tropical Medicine, Nagasaki Universityの論文
- 1978-03-30
長崎大学熱帯医学研究所,Institute of Tropical Medicine, Nagasaki University | 論文
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