産業クラスターの進化と比較制度分析 : 均衡の要約表現と共有予想の通時的分析に向けて
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概要
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産業クラスター研究において,産業クラスターの生成や発展プロセスにたいする研究は主流ではない。しかし,産業クラスターは,固有の歴史を持ち,さまざまな環境変化に対応する中で進化を遂げてきたといえる。そしてそのプロセスにおいては,企業家や組織団体といった経済主体が,進化を促す契機となるなど,重要な役割を担う。しかし既存の産業クラスター研究においては,経済主体への関心は高いものではなかった。そこで,本稿では,歴史と進化を重視する比較制度分析の枠組みを産業クラスター研究のツールとして導入することで,産業クラスターの進化プロセスの分析を試みる。この分析枠組みは,制度を均衡の要約表現と共有予想として概念化する。既存の共有予想に対して,経済主体が認知的危機を感じた時,制度は変化へ向かう。そのような変化の前後の制度比較により,ある特定地域の通時的分析が可能となる。本稿では,韓国の東大門市場を事例として取り上げ,その100年に及ぶ歴史を見ていくことで,IMF 金融危機前後の制度比較を行った。環境変化によりナッシュ均衡の危機に直面し,東大門市場の商人達は,価格重視からデザイン重視へとその行動様式を変化させている。しかし,複数の経済主体が並存する産業クラスターでは,制度変化の道のりは複雑なものとなる。本稿の結論は,制度変化の通時的分析を通じて,産業クラスター研究における経済主体の役割の重要性と制度変化の複雑性を主張するものである。
- 慶應義塾大学出版会の論文
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