訪花動物群集と生息環境の現状と課題(<特集1>ハナバチと訪花性双翅目の多様性研究の現状と課題)
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概要
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28の研究から得た、32地域の訪花動物群集のデータをもとに、群集の属する気候区分や植生タイプによって、訪花動物群集の組成を特徴づけることができるかどうかを検討した。その結果、個体数と種数について、訪花動物の主要4目(膜翅目、双翅目、鱗翅目、鞘翅目)の割合、および膜翅目と双翅目の組成は、群集が属する気候区分や植生タイプと一定の対応を示した。具体的には、ツンドラ/高山帯では双翅目の割合が多く、熱帯では双翅目の割合が少ない傾向がみられた。膜翅目では、寒冷な地域ほどマルハナバチ属の割合が多く、温暖な地域はミツバチ属とその他のハナバチ上科の割合が多かった。これまで、ミツバチやマルハナバチなどの真社会性ハナバチは、最も重要な役割を持つ送粉動物として、非常に多くの研究がなされてきたが、真社会性のミツバチ科が訪花動物群集の個体数に占める割合は、平均して16.5%(0.5-73.6%、中央値=9.6%)にすぎなかった。一方双翅目では、湿地でハナアブの割合が高い傾向があった。幾つかの調査地域はこれらの傾向から逸脱していたが、その理由として、外来種の影響や地域固有の地史的な背景が伺えた。訪花動物群集は、地域の植物群集の発達と深い関係にあると考えられる。従って、植物群集が成立する仕組みを理解するうえでは、気候や植生、地史学的な背景などが、訪花動物群集の形成にどのように関わっているのかを把握するとともに、多種多様な訪花動物の生態的機能を研究していくことが望まれる。
- 2014-03-30