ポリネーターの定花性
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概要
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ポリネーター(花粉媒介動物)には、同じ種類の植物を連続して訪問する性質(Flower constancy:定花性)がある。この走花性のメカニズムについては、主に2つの仮説が提唱されている。採餌技術記憶の干渉仮説と探索イメージ仮説である。前者は、ポリネーターが複数の花に対応した採餌技術を同時に記憶しておくことができないため、1つまたは少数の種類の花に専門化することで効率的に採餌しているという説、後者は、ポリネーターは一度に一種類の探索イメージ(花探索の手掛かりとする色や形態)しか使うことが出来ないという説である。この両説は、最近明らかになりつつある昆虫の記憶メカニズムとも整合性がある。すなわち、最も引き出しやすい記憶形態である短期記憶は容量が小さく、一種類の採餌技術や探索イメージしか格納できないため、定花性が起きると考えられる。一方、定花性が植物にとって都合の良い行動であることは多くの研究者が明言しながらも、定花性が植物の繁殖や進化に与える影響を調べた研究は少ない。植物の密度が大きい時には定花性が顕著になることや、植物上での滞在時間が長い時ほど、次にも同種の植物を訪問する傾向があることが、数例報告されているにすぎない。定花性が、植物の繁殖や進化にどのような影響を与えているのかは、今後の研究が待たれる。
- 2006-12-05