社会共通資本としての医療情報システム
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概要
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高度情報社会において,信頼性・妥当性・比較可能性が高い情報にだれでも公平にアクセスできることは,民主主義的意思決定を支える絶対条件となる.医療政策の決定・医療市場におけるマーケティング,医療技術の評価や質向上のための取り組み,消費者による医療の選択などを支えるには,上記の要件を満たした情報とそれを提供・管理する公益性の高いシステムが必要である.本稿では,社会共通資本として,医療情報の標準化の枠組みと,それによって収集され公開利用に供される大規模診療データベースについて,米国の事例紹介とわが国の現状の課題を比較しつつ記述した.米国の事例として診断群分類の導入によるコードや情報様式の標準化の進展,さらに90年代に制定された関連法規(Health Insurance Portability and Accountability Act)などについて紹介した.さらに米国政府機関が構築し公開利用に供されている個票データベースとしてNational Inpatient SampleとMedicare Provider Analysis and Review Fileを紹介した.これらのデータは広く研究者・政策立案者に公開され,科学的実証分析に基づいた政策決定に大きく寄与している.一方,わが国においても近年日本版診断群分類導入を契機に,診療情報標準化の動きが加速したものの,公的な情報管理組織の欠如のため,情報標準化の枠組みに継続性が見られず,データ公開も進んでない.わが国の医療情報システムを社会共通資本として確立するために必要な要件について考察を行った.
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