医薬品の経済評価事例と活用の可能性
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概要
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経済評価の結果の応用は,アセスメント,アプレイザル,ディシジョンの3つの流れのうち,後ろ2つのアプレイザルとディシジョンに密接に関わる.アセスメントの「ルールブック」と,最終結果であるディシジョンの内容の双方が「ガイドライン」と呼ばれていることに,まず注意が必要である.複数の国で,公的医療制度での医薬品の扱い方を決める際に経済評価が応用されている.使われるポイントは医薬品の給付決定の可否と,給付価格の決定とに大別されるが,給付の可否と価格決定の双方にある程度影響することも多い.提出される評価は,基本的にはルールブックたる「アセスメントのガイドライン」に従うことになる.国・機関ごとに,アセスメントのガイドラインには多少の差異がみられる.効き目のものさし・アウトカムには,異なる疾患領域の薬を「ある程度」横断的に比較できることから,複数の国で,QALY(quality-adjusted life year)を使った評価が採用されている.ただし全ての国でQALYが必須なわけではなく,英国やニュージーランド・タイなど,QALYを使った評価を「必須」とする国と,オーストラリアやカナダ・フランスのようにQALYやLY(life year)など種々のアウトカムから適切なものを「選ぶ」国がある.なお,「米国ではQALYの使用が法律で禁止されている」などの誤解もままあるが,QALY以外のアウトカムのみを推奨する国はほとんど存在しない.どのようなアウトカムをとるにせよ,費用対効果の判断は増分費用効果比ICER(incremental costeffectiveness ratio)の数値を吟味することが基本となる.ドイツで使用されている効率的フロンティアも,本質的にはICERの許容上限値(閾値)の決め方の一類型であり,一般的な手法と矛盾するものではない.経済評価の結果のみで,給付の可否や価格を機械的に決定する国はない.他の治療法の有無や医療予算へのインパクトなどを総合的に判断して,最終的な決定がなされる.費用対効果が悪い医薬品についても一律に給付を拒否せずに,価格や使用条件などを個別に交渉して給付を認める患者アクセススキームなどの手法が,各国で導入されている.実際英国のNICE(National Institute of Health and Care Excellence)の閾値は1QALYあたり20,000ポンドとされるが,20,000ポンドを超える医薬品でも推奨されているものもある.
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