『ダロウェイ夫人』とヴァージニア・ウルフのパーティ空間
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概要
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パーティをキーワードにして、ヴァージニア・ウルフ(Virginia Woolf)の作品を読み解こうと試みる。パーティはウルフの作品に於いて重要な役割を果たしていながら、これまで、必ずしも正当に評価されてきたとは言えない。しかし、例えばパーティの催される1日を描く『ダロウェイ夫人』(Mrs.Dalloway)では、「瞬間」("the moment")を捉える特有の儀式として、パーティが効果的に用いられている。そこでは、もろさと表裏をなしながら至福の「瞬間」が鮮やかに定着されている。ウルフが、個我や自我に収斂したいわば閉塞的な世界を描いた作家と思われている一面で、常に社会との関係を意識し続けていたことを再考するひとつの試みでもある。パーティ空間を媒介にして、人は社会と幸福に関係を保とうとするが、そうはできない時代や個人の意識のため、様々なアンビヴァレントな意識を感じていると言える。パーティの準備に始まりパーティのクライマックスで終わる『ダロウェイ夫人』をとりあげて、G.ジンメル(Georg Simmel)や山崎正和の「社交論」、C.エイムズ(Christopher Ames)のパーティ論を踏まえつつ、ヨーロッパ近代の社交とウルフのパーティ空間について考える。
著者
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