民事紛争解決における合意をめぐる諸問題 : 和解と納得を中心にして(<特集>法と心理学の可能性)
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概要
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広く私人間の生活関係について生じる争いを民事紛争というが、裁判所に持ち込まれる事件の約半数は和解や訴えの取下げなど当事者間の話合いにより終結している。しかし、裁判所に持ち込まれる事件は民事紛争の一部であり、その多くは裁判所外の和解など、当事者間の紛争解決へ向けた合意により解決しているといわれる。また、裁判所に持ち込まれる事件の中には、裁判を目的とすることなく、紛争解決に向けた当事者間の合意を得るために、第三者である裁判所の介入を求める場合(調停)もある。司法制度改革に伴う法曹人口の増加により、これまで紛争解決の場に取り込めなかった紛争まで広く法曹の汗による解決が期待されることになるが、当事者間の合意や納得を基本とする和解等の重要性が後退することはないであろう。そこで本稿では、紛争解決における合意の中でも特に重要と思われる裁判所上の和解に焦点をあてた。まず、民事訴訟法が規定している和解の果たす役割を明らかにするとともに、なぜ裁判手続の中で和解が好んで用いられているのか、和解の実態や運用について言及する。さらに、当事者間の合意を本質とする紛争解決制度が内包する問題点について、従来の議論を整理しながら、検討を試みる。
- 法と心理学会の論文