立地特性と現地サプライヤー関係 : 中国日系電子機器メーカーの事例
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概要
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本稿は、立地条件の違いがメーカー・サプライヤー間で形成される企業間関係(以下MS関係と記す)にどのような影響を与えるのかを事例分析から探索的に検討したものである。MS関係研究において、地域の特性がその関係形成には確かに影響を与えると考えられているにも関わらず、暗黙のうちにその地域特性を考慮の外において議論されてきた傾向がある。本稿では、同規模、しかもほぼ同時に中国で製品開発を開始した2つの日系電子機器メーカーの事例を詳細に比較することで、アウトソーシング先地域の特性が、それぞれの企業のMS関係に強い影響を与えていることを明らかにする。具体的には、アウトソーシング先地域において商習慣として特定の取引先への長期的かつ深いコミットメントを志向する文化があるときには、よりメーカー側業務の上流まで踏み込んだ内容の高度化を伴うMS関係が観察される。アウトソーシング先地域に関係の頻繁な変更を志向する文化がある場合には、より短期志向的で手離れの良い部分、切り分けのしやすい業務についてarm-lengthのMS関係が構築される傾向がある。こうした分析から、本稿は、企業がMS関係を構築するにあたっては、自分が望むアウトソーシングの形と、関係を取り結ぶ相手先の地域特性とを検討し、それらが適合するように行動すべきことを指摘する。
- 2013-09-30