富山県呉西地方における尊敬形「〜テヤ」 : 意味・構造の地域差と成立・変化過程
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
富山県呉西地方には動詞尊敬形「〜テヤ」があり,南部の井波では継続相,北部の高岡では非継続相を表す。いわゆる「テ敬語」にあたる形とされてきたものだが,両方言とも基本終止形〜テヤが連体形・疑問形にもなり,このヤをコピュラとはみなせない。井波方言では,否定形が「〜テ(ン)+補助形容詞ナイ」であること,アクセントが「〜テ+補助用言」に準じることから,「〜テ+助動詞ヤ(コピュラとは別語)」と分析でき,高岡方言では,否定形が〜ンデヤとなること,アクセントが中止テ形やタ形に準じることから,テヤを一つの接尾辞だとみなせる。井波より南の五箇山には「〜テ+存在動詞アル」に由来する継続相尊敬形「〜テヤル」があり,井波のテヤはその変化形,高岡のテヤはさらにそれが変化したものと推測される。こうした呉西地方のテヤ形の成立・変化は,上方語や他の西日本方言の「テ敬語」の成立についても再考の余地があることを示唆する。
- 2013-07-01
著者
関連論文
- 日高水穂著, 『授与動詞の対照方言学的研究』, 2007年2月10日発行, ひつじ書房刊, A5判, 354ページ, 7,400円+税
- 方言調査データのXMLによるデータベース化
- 日本語のテンス・アスペクト・ムード研究と通言語的研究(日本語学会2011年度春季大会シンポジウム報告)
- 動的述語のシタの二義性について
- 富山県呉西地方における尊敬形「〜テヤ」 : 意味・構造の地域差と成立・変化過程