若手研究者から見た法学と心理学の協働の現状と課題 : 議論のための基礎データの提供(<サブ特集>法と心理学のまなざしと、その再検討:協働を求めて)
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概要
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本稿は、現在の法学と心理学の協働の状況を探り、その問題点と課題について論じるものである。そのための手段として、本稿では「法と心理学会」の現状分析を行った。その結果、以下の通り本学会の抱える問題点が明らかになり、それぞれ検討を加えた。本学会の会員に裁判官や検察官、警察官がおらず、また、民事法学者の参加も極めて少ない点につき、その原因として本学会の前身が日弁連刑事弁護センターの研究会であることと、一部の裁判官らに心理学に対する拒絶反応が存在している可能性を指摘し、従来本学会に参加してこなかった人々が参加しやすくなるよう整備することが我が国の「法と心理」研究の発展には必要であると指摘した。基礎法学者の参加が少ない点については、適切な説明をなすことが困難だとして、今後の検証課題だとした。法学を専攻する若手研究者(大学院生)の参加が少ない点につき、法学の世界では、解釈学がその中心にあり、大学院生が学際的研究に取り組みにくいことを指摘した。学会誌や学会大会で心理学者の報告が多いことについては、研究の双方向性が確立されておらず、これは国際的にも同じような傾向がみられると指摘した。まとめにかえて、「法と心理」研究が確固とした学問基盤を築くための1つの方法を示し、加えて、心理学の側に「研究」と「臨床」との架橋について議論を深める必要性を指摘した。
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