慢性精神分裂病者の自立行動に対するトークン・エコノミーの効果
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概要
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精神病院の閉鎖病棟(45床)で,慢性精神分裂病者について,起床,配膳,中庭掃除に対し,約2年間,トークン・エコノミーを行い,つぎの結果を得た。起床は,(1)対照期において,起床行動生起率(以下,起床率)が30%未満の者に,有効であった,(2)即時強化にひき続き,遅延強化を行うと,後者での起床率が高く,前者でみられた冬期での起床率の低下も起きなかった,(3)トークン・エコノミーの開始当初から在棟した群よりも,その中途から入棟した群の方が,入棟当初から高率に起床し,その後の改善度も大きかった。配膳は,(1)トークン・エコノミーの効果はほとんどなかったが,対照期において配膳行動生起率(以下,配膳率)が0%の群がわずかに改善した,(2)即時強化にひき続き,遅延強化を行うと,後者での配膳率の方が高かった,(3)トークン・エコノミーの開始当初から在棟した群よりも,その中途から入棟した群の方が,入棟当初では配膳率は同程度であったが,その後の改善傾向は大きかった。中庭掃除は,短期間行ったが,急速な増加傾向を示した。トークン・エコノミーの初期では,ある期間が始まるまでに,トークンを多く貯蓄していた者は,それに続く期間で目標行動を多く遂行したが,トークン・エコノミーの期間が長期に及ぶと,多く貯蓄していた者が,目標行動を多く遂行するという傾向はなくなった。トークン・エコノミーを行って,起床率は変化しても,三大学法行動採点表と九大式病状行動表で示された精神症状には変化がなかった。
- 日本行動療法学会の論文
- 1986-03-31
著者
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