自閉症状を示す障害幼児の言語指導に関する検討 : 文字学習から音声言語へのプログラムの展開(<特集>自閉症と行動療法(その2))
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概要
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インテーク時には,緊張した音声を出すのみで理解言語はなく,ジェスチュアのようなコミュニケーションの手段ももっていなかった4歳8ヵ月の自閉症状を示す幼児に指導を行なった。指導過程において,本児は,視覚的な課題には順調な進歩を示したが,聴覚的な課題にはほとんど進歩を示さなかった。そこで,音声言語に先立ち,文字,その後指文字を導入した。7歳2ヵ月時には,本児は多くの絵カードを文字によって命名することができ,5単語を指文字によって命名することができた。また,音声を聞いて4単語を理解することができた。母親の話しかけに対して注意を向けることもでてきた。指導の経過から次の点について検討した。1.聴覚刺激と視覚刺激が同時に提示された場合,聴覚刺激が視覚刺激の妨害刺激として働いたことが考えられる。2.適切なコミュニケーション手段の獲得により,学習態度の改善がみられた。3.視覚的なシンボルの獲得が聴覚的なシンボルの獲得に影響を与えた可能性があるが,さらに検討が必要である。4.自閉症状に大きな改善はなく,これらの症状が聴覚刺激の理解困難によるものとは考えられなかった。したがって,本児は自閉症状と感覚性失語症状をあわせもつ症例であると考えられる。
- 一般社団法人日本認知・行動療法学会の論文
- 1979-09-30
著者
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