研究成果の応用(<特集1>建築社会研究は東日本大震災とどのように向き合うのか)

概要

論文の詳細を見る
東日本大震災では5万戸以上の仮設住宅が建設された。仮設住宅は被災者が生活を回復する重要な期間を過ごす場所である。しかし、仮設住宅は、いつ起こるかもしれない災害に備えて準備され、迅速に建設することが主目的とされるため、地域環境に十分に対応したものとは言い難い。そのため、居住者自らによる環境改善が不可欠である。筆者は、東日本大震災に際して、新潟県中越(中越地震(2004)、中越沖地震(2007)、7.13水害(2004))の仮設住宅調査で得られた成果をもとに仮設住宅の改良手法をまとめたホームページを開設した。本稿の目的は、災害支援の一環として研究成果を還元したこのプロジェクトをケーススタディとして、研究成果を実装する際の課題について考察するものである。本稿は、インターネット上の情報プラットフォームにおいて,行政、ボランティア、NPOなど、様々な支援者に情報提供とそのフィードバックが可能となっている点に着目し,社会と密に接続した新しい方法論の可能性を明らかにした。また、こうしたインターネットベースの成果還元のためには、成果の細分化やラベル付けによるデータベース化など、研究者の編集能力が必要になってくることや、その弊害として成果の一部が都合よく解釈される恐れがあることを指摘し、その対策としてデータに文脈を盛り込むことと、不測の影響に配慮し、成果の応用は慎重に行う必要があることを指摘した。
2011-12-30

研究成果の応用(<特集1>建築社会研究は東日本大震災とどのように向き合うのか)

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク