武者小路実篤中期作品の問題点 : 小説「不幸な男」を視座として
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
武者小路実篤の中期(大3〜6)作品群において、素材を同じくする戯曲「罪なき罪」(大3・3)と小説「不幸な男」(大6・5)の二作品は、他の諸作品を挟む時期に位置する。その中には、小説「彼が三十の時」(大3・10〜11)、戯曲「その妹」(大4・3)、戯曲「ある青年の夢」(大5・3〜11)など、戦争への作者の関心が反映された著名な作品が多く、この中期が「ヒューマニズムの時代」と呼ばれるゆえんである。しかし、小説「不幸な男」の特質として、戯曲「罪なき罪」から小説「不幸な男」への変容の根底には、〈死のリアルな表現〉の意図であること、その素材のデフォルメの意図には、モデルの〈苦境と苦悩の明確化〉があること、その主題は、〈神ならざる凡人には重すぎた運命〉であり、その情調は、〈厳粛な暗澹たる悲哀〉であることなどから、小説「不幸な男」という視座からは、この中期には、〈死の認識〉のモチーフが明瞭に見える。それが、「非戦」的と言われる諸作品を芸術として成立させる礎であり、武者小路独自の運命の観照なのである。
- 2012-09-29
著者
関連論文
- 『真理先生』 (特集 武者小路実篤の世界) -- (作品の世界)
- 武者小路実篤と「新しき村」 (特集 武者小路実篤の世界) -- (武者小路実篤の世界)
- 武者小路実篤「その妹」という戯曲とその上演
- 書評 大津山国夫著『武者小路実篤、新しき村の生誕』
- 大津山国夫著『武者小路実篤研究--実篤と新しき村』
- 座談会 大学文学部のゆくえ--国立大学独立行政法人化問題をめぐって
- 「友情」の世界--生命力と宗教
- 武者小路実篤と有島武郎--宗教的感性と社会的知性
- 武者小路実篤「荒野」の世界--調和的上昇志向の文芸
- 武者小路実篤「世間知らず」と
- 武者小路実篤中期作品の問題点 : 小説「不幸な男」を視座として
- 武者小路実篤「かちかち山」の世界 : 〈昔話〉から〈童話劇〉へ
- 越谷キャンパスにおける情報教育--文学部の例を中心として (特集:大学教育の情報化)