武者小路実篤「かちかち山」の世界 : 〈昔話〉から〈童話劇〉へ
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概要
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武者小路実篤の童話劇「かちかち山」(『白樺』大6・7)の特質は、巌谷小波の〈昔話〉「勝々山」との比較によれば、原話にみられる前半部と後半部の飛躍や不統一が、兎を主人公とする報恩譚とされたこと、および人物造型に一貫性が与えられたことによって解消され、同時に兎と爺の連携による勝利の歓喜が表現されたことである。また、この作品は、登場人物の心理と思考の精細でリアルな表現によって、復讐の〈昔話〉から、信頼の主題や悲壮を帯びた歓喜という情調をもった、近代の〈童話劇〉へと変った。戯曲として読んだ場合、子どもには難しいが、大人向けの芸術作品を教材としていた信州白樺の教師赤羽王郎に慫慂されて創作したこの作品に、武者小路は、その主題が子どもの心にも感じられ得ると信じていた。〈昔話〉を〈童話劇〉に昇華させた過程の、歓喜から拭い去り得ない悲壮の情調は、まさに武者小路の創作の歩みと一致する。
- 2012-03-15
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