中国雲南省北部に生息するPieris属の1新種の記載(鱗翅目,シロチョウ科)
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概要
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東アジアのPieris属ならびにその近縁種について著者らが行った最近の現地調査並びに分子系統分析の結果,Sinopieris davidis及びその近縁(亜)種に酷似した新しい蝶を発見するに至った.その蝶は東チベットにおいて2009年及び2012年の5月に採集されたものである.翅紋・発香鱗・生殖器を精査した結果,その蝶は独特の形態的特徴をもつことが明らかになった.Huang(1995)は新種Sinopieris gongaensisをタイプ種として新属Sinopierisを記載し,dubernardiグループ(dubernardi及び近縁種/亜種)をPieris属/Pontia属からSinopieris属に属変更した.ただし,gongaensisは後に(davidis)venataのシノニムとされた.それ以後dubernardi,davidis,venata及びそれらの関連タクサがSinopieris属に含まれることになった.ところがこの新しい蝶はSinopieris davidisに酷似しているものの,翅紋の一部がSinopieris属の記載に適合しない.また発香鱗や♂生殖器からもこの蝶がdavidisやdubernardiとは全く異なることが示唆された.さらにmtDNA因子(16SrRNA)の分子分析の結果からも,独自の分子系統を持ちdavidisやdubernardiとは全く違う系統であることが示唆された.以上のように形態的特徴及び分子系統分析の結果にもとづいて,この蝶をPieris属の新種Pieris shangrilla sp. nov.(和名:シャングリラシロチョウ)として記載した.Pieris属においては翅紋の類似性が必ずしも系統上の類縁性を意味しない.たとえば欧州におけるrapaeとpseudorapaeとの関係,中国西部におけるextensaとerutaeとの関係あるいは日本におけるmelete(スジグロシロチョウ)とjaponica(ヤマトスジグロシロチョウ)との関係同様,翅紋が非常に類似していながらもshangrillaはdavidisあるいはその近縁種とは系統が異なる別種としてチベット山脈で共存していると考えられる.
- 2013-04-15
著者
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