日本における食物アレルギー児をもつ母親に関する研究の現状
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概要
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背景 わが国における育児環境は大きく変化し,乳幼児を育てる母親の育児不安や育児ストレスは深刻な状況にある.慢性疾患をもつ児の母親の育児ストレスは健康児の母親より強く,児側の要因が母親の育児不安やストレスと関連することが明らかにされている.乳幼児期に多く発症する食物アレルギー(以下FAとする)は,いまだ治療法の確立には至っておらず,除去食管理を担う母親には様々な負担が存在することが報告されている.食物アレルギー児(以下FA児とする)の母親への育児支援は重要な課題であり,日本における近年の疾患治療・検査の動向を反映させた支援の方向性を明らかにするために,母親の持つ問題の実態や研究の方向性を検討する必要がある.目的 日本におけるFA児をもつ母親の育児に関する研究の現状を明らかにし,今後の研究の方向性を検討する.方法 医学中央雑誌(Ver5.)を使用し,過去21年間(1991年-2012年9月)に発表された原著論文を対象に,「食物アレルギー」「母親or養育者or保護者」というキーワードを組み合わせて検索した.テーマ,シソーラス用語,研究目的およびその結果何が明らかになったのかという内容の類似性に基づき分類・分析し,FA児をもつ母親の育児に関連する問題の現状および,研究の方向性について検討した.結果 対象となった文献は,2002年以降発表されていたもので16件であった.研究内容は分類・分析の結果「食生活の困難・負担」に関するものが最も多く,その他に「不安」「ストレス」「生活の質」「疲労」「FAの意味」があった.母親のFAについての不安やFA児の養育上の様々な日常生活上の制限や社会生活の中での調整の困難さが母親の負担を高めていた.育児ストレスやQOLについては十分明らかにはなっていなかった.結論 1)先行研究において,FA児を持つ母親はFAに関する「食生活の負担・困難」「不安」「ストレス」「疲労」といった問題を抱えていた.2)FA児の母親の育児ストレスについては十分に解明されておらず,その実態及び関連要因について明らかにする必要がある.3)FA児の母親のQOL関連の研究は近年になってみられていたがFA児の母親のQOLの概念や構成因子,関連要因は明らかになっておらず今後研究を進める必要がある.4)母親への支援を検討するにあたって,育児ストレスや不安の軽減・QOLの向上のための促進因子を明らかにし,母親の育児支援の方向性について検討を行う必要がある.
- 2013-04-00
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