逆U 字曲線仮説について-政治・経済学の視点から-
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概要
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経済学の領域においては、よく知られた二つの逆U 字曲線仮説がある。一つは、一人当たりGDP(横軸)とジニ係数(縦軸)との関係を扱ったクズネッツ曲線仮説(分配・再分配問題)であり、経済発展初期において所得分配の不平等は拡大し、やがて低下に転ずるという説である。この逆U 字曲線仮説は現在に至るまで様々な実証的、理論的研究が行われてきたものの、結論はさまざまであり、この仮説は全面的に支持されているわけではない。他の一つは、一人当たりGDP(横軸)と環境汚染(縦軸)との関係を検討した環境クズネッツ曲線仮説である。経済発展は自然や生態系を破壊し、そのことが経済発展を減退させる。しかし、経済発展によって環境破壊が生じるものの、さらなる経済発展は技術革新を引き起こし、環境破壊が改善されてゆく傾向があるという仮説である。小稿では、これらの視点とは異なり、一人当たりGDP と政治体制の変遷との関係を見る逆U 字曲線仮説に注目する。この意味での逆U 字曲線が描かれる平面は、縦軸に独裁体制指数、横軸に一人当たりGDP をとった政治・経済学的領域を表わす。この平面を利用することによって、経済発展と政治制度の成熟度との関係を考察することが可能となる。
- 2013-03-00