東アジア共同体(East Asian Community)構想をめぐって
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概要
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ヨーロツパにおける欧州連合(EU)の拡大と深化、他方、アメリカにおけるNAFTA の存在および米州自由貿易地域(FTAA:Free Trade Area of the Americas)構想(現在、交渉停止中)を背景として、東アジアにおいても、自然発生的な地域統合から制度的地域統合をめぐる議論が学界で活発化しているだけでなく、現実の国際政治的アジェンダにもなってきている。その一つに東アジア共同体(East Asian Community:EAC)がある。実際、2004年9月、小泉首相(当時)は国連総会一般演説において、「ASEAN+3の基礎の上に立って、私は『東アジア共同体』横想を提唱しています」と発言した。また、鳩山首相(当時)は2009年10月にタイ・ホアヒンで開かれた東アジア首脳会議において東アジア共同体を提唱した。しかし、いずれの共同体構想も内容的には不十分で明確な実体がない。国際政治的アジェンダとしての東アジア共同体だけでなく、学会における東アジア共同体構想も、問題の性質上、その実態は必ずしも明らかではないし、意見の一致もあるわけではない。小稿では、このEACの足跡および将来像をめぐる諸問題を検討する。このような観点からの概観は、EACに対する理解を深め、その問題点や課題を整理することになるから、意義のないことではないであろう。