古代語と現代語の動詞基本形終止文 : 古代語資料による「会話文」分析の問題点(<特集>コミュニケーションの社会言語科学)
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概要
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本研究は古代読の物語会話文を対象に動詞基本形終止文の用法を分析し,現代語との相違点及び共通点を明らかにすることを目的とする.古代語の動詞基本形終止文を現代語と比較分析した結果,以下の3点の相違点が観察された.1)自然現象のような典型的な恒常的事実を表す例がない.2)現代語のテイル形やタ形に相当する場合にも現れ得る.3)現代語では「〜ナンテ」や「〜ノダ」などの他の文末形式が付加する場合にも現れ得る.以上の特徴から,古代語の基本形終止文は,現代語のように純粋な事柄の概念を表すことを基本とするものではなく,テンス・アスペクトや他の文末形式の意味をも含み込んだ遥かに広い範囲をカバーする述語形式であったことがわかる.別の観点から見れば,事態を分析的に表現し分ける現代語とは異なる記述態度を反映しているとも考えられ,古代読資料の「会話文」が当時の会話の実態とはかなり異なっている可能性があることを示唆している.
- 社会言語科学会の論文
- 2003-07-31
著者
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- 須田義治著, 『現代日本語のアスペクト論-形態論的なカテゴリーと構文論的なカテゴリーの理論-』, 2010年6月23日発行, ひつじ書房刊, A5判, 404ページ, 6,800円+税
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