社会と言語を繋ぐ意味について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿の目的は言語行為が社会的な営みであり,我々の社会・文化的考えや行動を捉える際の重要な分類システムであるという認識に立脚し,発話の果たす意味や役割をコンテクストとの関わりで分析することにある.まず,Silverstein(1976;1985;1995)で述べられている指標性(Indexicality)のうち中心概念である'Presupposing/Creative Indexicality','Indexical orders'を概説し,我々日本人は,発話の際,話し手は聞き手等がどのような社会的属性を持った人か(例:性別,職業,年齢など)といったマクロ的要因を思考するだけでなく,談話の流れの中で相互作用的(interactional)に生じてくるミクロ的要因(例:話し手の心理的状態やウチ・ソトの区別など)にも思考を向けねばならないことを説明する.また,同時に,同じ言語形式の中に自分自身のアイデンティティをも示していることを説明する.そして,本稿の主張である,言語形式と上述したミクロ,マクロな要因がコンテクストの中で複雑に絡み合っていることを明らかにする.具体的には,マクロ,ミクロ的要因は必ずそれぞれのレベルだけで固定的に機能するものでなく例えば,マクロ的要因がミクロ的レベルでも機能する場合があることを,ウチ・ソト,年齢,地域性などの幾つかの例を上げて指摘する.
- 2001-09-30