自動車部品サプライヤー・ネットワークの多面的分析視座(自由論題)
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概要
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本研究は,自動車部品サプライヤー・ネットワークの新たな分析視座の導出を試みることを目的としている。日本の自動車産業を取り巻く環境は,新興国の台頭,海外生産,モジュール化の進展など激しさを増しており,一社単独で困難な取り組みは複数企業によるネットワーク活動が志向されている。サプライヤー・ネットワークは通常の部品取引を担うものもあれば,技術開発や新規事業創造に向けた取り組みなど多岐にわたり,これらを明確な分析軸からまとめて考察することは困難である。そこで本研究は,サプライヤー・ネットワークの考察に戦略論,社会学,中小企業論の3つの領域から複合的なアプローチを採用した。ネットワークの分析には,基本となる部品取引に関する経済的要素はもちろん,企業間相互の連携を重視した社会的要素,さらには新事業展開をするネットワークなのかも考慮する必要に迫られるため,経済的要素,社会的要素,事業展開の3つの軸を用いてキューブからなる分析視座を提示した。本分析視座を採るメリットとして,メンバー間の経済的および社会的要素の強弱を考慮してネットワークを区分すること,長期にわたり継続しないネットワーク活動の存在についてもとらえることができること,つまり,時系列的推移および他事業展開を考慮することができ,ネットワークの一時的休止および再始動を把握できることをあげた。ネットワークそれぞれの存在に注目し,それらが取り組みの長短,関係の強弱,経済的・社会的性格に影響していることを考慮していることが本研究の特徴である。
- 2012-11-03