大規模災害発生時のケアへのアクセシビリティ

概要

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東日本大震災の発災当時,わが国ではその災害規模に対してしばしば想定外という言葉が用いられた.これに象徴されるように,これまでに積み重ねてきた防災・減災・事前復興というリスクマネジメントの概念による計画のみでは,大災害の備えとして十分でないことが明らかになる中で,クライシスマネジメントの視点から問題を再考することが,今後非常に重要になってくるだろうことは想像に難くない. 周知の通り,災害発生時には様々な地域施設へのアクセシビリティが低下し,災害の規模が大きいほど,その度合いは大きくなる.そして,供給量には上限があり,需要者全員がサービスを受けられない事態が容易に起こり得る.特に緊急時に需要が大量に発生する地域施設については,その影響の大きさを考慮して,どの程度の変化がどこで起こるのか,把握する手段を持つことが重要となる.医療は,災害発生時のような非常時において需要が高まるサービスの一つである.医療施設へのアクセシビリティが災害時にどのように変化するのか,そして医療サービスが受けられるか,つまり施設のAvailabilityは,現実的には非常に重要な問題になる. そこで本稿では,災害発生時における医療施設へのアクセスに着目して,そのアクセシビリティがどのように変化するか検証する.また,災害時の傷病者搬送は一般車によるものが多数を占めることがわかっており,その実態を踏まえて搬送行動の在り方を考究する.具体的には,被災地の宮城県を舞台に,2次救急医療施設を対象として,震災前後のアクセシビリティ変化を分析するとともに,それら医療施設のキャパシティを想定し,傷病者が同時大量発生する際の受療可能施設へのアクセシビリティの分析を行う.分析に際しては,アクセシビリティを道路距離と読み替え,geographic information system(GIS)を用いて道路距離を計測した. 分析の結果,震災後の2次救急医療施設への平均移動距離は,震災前と比べて宮城県全体で12%延びたこと,事前に割り当てられた病院に向かう誘導型施策に従えば,施設を探索して移動する行動と比べて30%の移動距離短縮につながることが示された.
2013-02-00

大規模災害発生時のケアへのアクセシビリティ

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