日中における鋸の比較研究 : 鋸刃における実測と検討(プロダクトデザイン)
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概要
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日中の木工用鋸については、日本では引き使いであり、中国では押し使いと、全く使用法が異なっている。本稿では両国の木工用鋸の刃部の複数部位に着目して実測データの収集をおこなった。調査対象104丁における実測項目は、両国の縦挽き鋸の歯形状とアサリ形状についての比較と種類、横挽き鋸の歯形状とナゲシ形状の種類と形状、及びアサリ形状についてである。特に「引き使い」という行為による鋸の歯形状と「押し使い」という行為による鋸の歯形状との考察については、「引く」日本製鋸と、「押す」中国製鋸の得られたデータを反転させて形状を重ね合わせて比較考察をおこなった。1)その結果、鋸歯については以下の点を明らかにすることが出来た。・日中における縦挽き鋸について、表刃と水平線との夾角(角度3)はほぼ一致していることが確認できた。・横挽き鋸の場合に、日中における表刃と裏刃の角度差は縦挽き鋸にくらべると約半分の角度となっている。・日本の鋸歯形状は中国製鋸に比べて、縦挽き・横挽きに係わらず面積が小さいことが確認でき、その差は縦挽き鋸の方がより大きいことが確認できた。2)つぎにアサリについては以下の点を明らかにすることが出来た。・日中両国の実測調査において、日本製鋸は縦挽き・横挽き鋸に係わらず、すべての実測鋸にアサリが確認できたが、中国製鋸の中にはアサリなしの鋸が23丁確認でき、内訳は縦挽き鋸18丁、横挽き鋸5丁であった。・日本の鋸は縦挽き・横挽きに係わらずその種類は「人字アサリ」が圧倒的に多く確認できた。・中国では、用途によってアサリは一般的に「二アサリ」と「三アサリ」に分けられていることが確認できた。以上のことから、挽き鋸に関しては日本製鋸にナゲシの工夫が多く見られるが、アサリの種類がほぼ限定されている。一方、中国製鋸はアサリの3種がさまざまな作業鋸に使われていることが確認できたが、ナゲシの種類は少ないのが特徴といえる。また「押す」行為と「引く」行為の違いは、「刃先角」(角度2)、「ナゲシ」、「アサリ」と「歯形状面積」の4箇所に差異が確認でき、これらの様々な組み合わせによって目的別鋸が製作され、また使い勝手の良いように工夫や影響を与えていることが確認できた。
- 2011-10-01
著者
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