大雪山国立公園高山帯におけるマルハナバチ相のモニタリング調査
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
環境省生物多様性センターのモニタリングサイト1000では、2011年より高山帯におけるマルハナバチ相のモニタリング調査を開始した。最初の登録地である北海道大雪山国立公園における初年度の調査概要を報告する。赤岳登録地の森林限界から高山帯において、6月上旬から8月下旬にかけて、計12回のライントランセクトによるマルハナバチ相、ならびに訪花植物の調査を行った。調査シーズンを通して、総計473個体が確認された。その内訳は、エゾオオマルハナバチが60%、アカマルハナバチが18%、エゾヒメマルハナバチが14%、エゾナガマルハナバチが7%、エゾトラマルハナバチが1%であり、移入種のセイヨウオオマルハナバチは確認されなかった。出現頻度は、6月中旬と7月下旬以降に高くなる二山分布を示し、前者は越冬明けの女王バチ、後者は働きバチが多数を占めていた。季節を通して約40種の植物への訪花が観察され、マルハナバチ類は高山帯において重要な花粉媒介者であることが確認された。マルハナバチ活動最盛期に黒岳登録地とヒサゴ沼調査地で同様の調査を行なったところ、マルハナバチ相は顕著な地域差が見られた。黒岳登録地ではエゾヒメマルハナバチの頻度が50%と最も高かった。ヒサゴ沼調査地ではエゾオオマルハナバチの頻度が90%以上を占めていた。また、ヒサゴ沼調査地ではセイヨウオオマルハナバチの侵入が初めて観察された。気候変動や移入種の侵入による今後のマルハナバチ相の動向について、継続調査の重要性が示された。
- 2012-11-30
著者
関連論文
- 薄膜フィルムに発生するすきま流れ励起不安定波動 : 分散関係と安定性解析(D&D2009)
- 地道なモニタリングが暴きだすエキサイティングな相互作用 : 気候変動がもたらすフェノロジカルミスマッチ(コメント,大島賞受賞者総説)
- 山岳生態系における植生変動の定量化に関する研究 : ─北海道大雪山系五色ヶ原を例として
- 地道なモニタリングが暴きだすエキサイティングな相互作用 : 気候変動がもたらすフェノロジカルミスマッチ
- 北方落葉広葉樹二次林における現存量,純生産量と林冠構造
- 553 狭い流路内に支持されたフィルムに発生する流れ励起不安定波動の分散関係と安定性解析
- 定山溪漁入ハイデの風穴植生
- 地球温暖化と森林生態系 : フェノロジーを介した生物間相互作用への影響(地球温暖化と日本の森林)
- 送粉系生態学のこれまでの経過と最近の動向(コメント,宮地賞受賞者総説)
- 立山におけるチョウノスケソウの個葉特性 : 中緯度高山帯と寒帯・亜寒帯ツンドラとの比較
- 個葉特性変異と環境傾度 : ツンドラ植物を中心に
- 大雪山土壌温度の通年変化
- ウラジロタデの生態的変異について
- ウラジロタデの生態的変異について(第二報) : 生活史特性の比較
- S1602-1-4 せん断荷重によるしわを有する薄膜フィルムに発生する流れ励起波動(柔軟媒体ハンドリングと画像形成システム(1),社会変革を技術で廻す機械工学)
- 高山植物群落の開花フェノロジー構造の場所間変動と年変動 : 市民ボランティアによる高山生態系長期モニタリング調査
- 大雪山国立公園(野外研究サイトから(21))
- 大雪山国立公園高山帯におけるマルハナバチ相のモニタリング調査