ラット甲状腺濾胞上皮のDNA損傷応答と放射線誘導オートファジーに対する年齢の影響
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概要
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放射線は甲状腺発癌の危険因子で,小児期被曝は高感受性であり,成人期では低感受性とされる.原爆被爆者甲状腺癌の過剰相対リスクは,被曝時10歳未満で1Svあたり約10倍であり40歳以上でリスクは消失する1).そこには,濾胞上皮の急性期放射線応答の年齢影響が示唆されるが,詳しいことは明らかになっていない. これまでに蔵重らは,7週齢のラットに8Gy局所照射後,6カ月後にDNA損傷応答分子53BP1核内フォ-カス数の増加傾向を認めること,18か月後に甲状腺腫瘍が発生することを報告している2).昨年の本研究会でわれわれは,8Gy X線照射後24時間までの未熟4週齢と成熟7週齢ラット甲状腺で,未熟甲状腺濾胞上皮ではKi67陽性細胞の発現減少や細胞質空胞変性を認め,両群ともアポト-シスは観察されず,Ser15リン酸化p53の発現は増加するが,p21, cleaved caspase-3の発現に変化のないこと,4週齢ラット甲状腺の電子顕微鏡像でオ-トファジ-像が照射後6時間に観察され,オ-トファジ-の分子指標であるLC3-IIの発現増加を報告した3). オ-トファジ-は細胞内タンパク質分解系の一つで,恒常性維持やプログラム細胞死に関与する.細胞の生存と細胞死の両方に関与し,癌においては抗腫瘍作用と腫瘍促進作用の役割を持つことが報告されている4). 今回,甲状腺濾胞上皮の放射線感受性に対する年齢の影響を調べるため,高齢の8カ月齢を含めた異なる週齢のラットで照射後急性期の甲状腺組織変化とDNA損傷応答,オ-トファジ-誘導について比較検討を行った.
- 2012-09-25
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