1910〜30年代台湾における肥料市場の展開と取引メカニズム(パネル(2)情報・信頼・市場の質,第78回全国大会小特集)
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概要
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本稿では,日本植民地期台湾における肥料市場の展開を考察し,農民の肥料需要を支えた取引メカニズムについて,以下の3点を解明した。第1に,農民の肥料購人アクセスは,当初は農会のみであったが,農民の肥料需要が増大・多様化する中で,台湾入肥料商が新たに加わったこと。第2に,農民は肥料購入に際して金融・不正肥料問題に直面していたが,これらの問題は制度的な対応(産業組合などの金融機関の設置,同業組合,肥料取締法の施行)では解消するには至らなかったこと。したがって,第3に,農民は,金融・不正リスクを軽減してくれる信頼出来る相手との取引を通じて,これらの問題を解消していったことである。農会の肥料事業は,金融的便宜の提供とともに,不正へのインセンティブがないため,農民にとって信頼できる相手であった。また,市場取引において農民が選んだのは籾と肥料を扱う兼営上壟間であり,兼営土壟間は,前貸し制と結びついた肥料取引の下では不正を行うインセンティブをもたないため,農民にとって信頼するに足る存在であった。
- 2010-11-25
著者
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