近現代スイスの自治史 : 連邦制と直接民主制の観点から(第77回全国大会共通論題)
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概要
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自治主体の自立性が高くその規模が小さいという点で,スイスの地方自治制度は世界的にみても極限的な事例である。本稿では,団体自治の要素を連邦制に,また住民自治の要素を直接民主制に見出しつつ,近現代スイスにおける地方自治の変容と特質を明らかにする。「求心型」連邦国家であるスイスでは,始源的な国家は州(カントン)であるが,基礎自治体(ゲマインデ)も強い自立性を持ち,市民権概念は今日でも自治体・州・連邦の三層構造をなす。この全ての国家階層で(半)直接民主制が採用されているが,これはスイス近代史上の二度目の転換によるフランス革命的近代像の克服の結果であった。ベルン市の事例は,旧体制来の閉鎖的市民団体と新設の住民ゲマインデが連続性・並存関係を有すること,州と自治体の権限重畳,後者の自治権の強さ,自治行政での官僚制原理の弱さを示す。また1934年のチューリヒ市第二次拡大(周辺自治体合併)の経緯は,極度に分権的な財政制度の下で都市化・工業化に直面した都市近郊自治体の試練とともに,直接民主制の下での長期にわたる合意形成過程が,「住民自治」の根幹をなしていたことを示す。
- 2009-07-25
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