中華民国期華北における企業活動の一断面 : 山東省〓県(いけん)の企業にみる技術導入と出資関係
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概要
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中華民国期の中国では,地方における企業活動が本格化した。本稿では,1930年代に華北有数の商工業都市となった山東省〓県を事例に,技術導入,出資関係,資金調達の観点から企業活動の特色を探る。〓県では,農村織布業に続いて,機械や染料など多様な企業が開業した。これらの技術は,留学や他地域での商工業への従事など,多様な経路を通じて導入されていた。また〓県の企業には,手工業や商業を通じて成長した〓県内外の資産家が参加している。1930年代に入ると,在地の資産家は互いに提携関係を結び,信豊染印公司,華豊機器廠,民豊電気公司を軸として,〓県には網の目状の出資関係が形成された。この時期,銀行の機能は限定的であり,企業の資金調達は出資者の縁故を通じた在来金融に支えられていた。1935年以降,銀行は担保貸付を中心に活動領域を拡大し,37年には紡績工場の設立計画も銀行主導で具体化した。この時期は,〓県経済に銀行資本が参入した新たな段階と評価しうるが,日中戦争の勃発によって挫折を余儀なくされた。
- 2008-05-25