中華民国期華北における機械製粉業 : 山東省済南を事例として
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概要
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機械製粉業は近代中国における基幹産業である。本稿は,内陸部の産麦地帯に立地した製粉業の実態を,中華民国期における山東省済南を事例に検討する。済南では民国初期に欧米式の機械製粉技術が導入され,1920年代初頭には上海や東北地方などに続く製粉企業の集積地となった。製粉企業の主たる出資者は,当時の北京政府や地方政府の官僚や在地の商人をはじめとする山東出身の資産家であった。そのなかで原料小麦や輸出向け落花生などを取り扱った糧桟経営者の活動が顕著であり,成豊麺粉公司を興した苗家は製粉業を通して資本の蓄積と技術の育成を進め,1930年代には紡績業にも参入するなど,済南地域の中核的な企業家となったまた,済南の製粉企業で使用された小麦は主に山東省内から調達される一方,小麦粉は済南市内や鉄道沿線の都市,商品作物の生産地に販売されるなど,済南製粉業は山東省内を基盤に成立していた。この点は輸入小麦を原料に全国市場に販路を求めた上海製粉業とは対照的であり,中国における製粉業展開の1つの類型を示している。
- 2011-02-25