小作争議の府県パネルデータ分析 : 1915〜29年日本の労働市場と農業再編
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿の課題は,第一次大戦後における小作争議発生の要因を,農外労働市場の拡大を起点に,農業労働力の流出や農地の再配分を通して生起する農業再編も視野に入れつつ,府県パネルデータを用いて定量的に検証することにある。従来の小作争議をめぐる議論では,機会費用論を検証することになる。府県パネルデータによる定量分析の結果,労働市場の拡大が,(1)米作付率の低下,(2)小作争議の発生,(3)小作料の下落,を促したことを確認した。このことは,労働市場拡大による農業経営の機会費用の高まりが,農業労働力流出を促し,小作地需要の低下と小作料の下方調整圧力となったこと,この農地流動化による小作料調整の摩擦が小作争議として表面化したこと,そうした摩擦を伴いつつ,長期的には小作料の下落によって農地の再配分が進み,中農標準化や自作専業化という農業の再編が進行したこと,と理解できる。本稿の研究史上の貢献は,(1)従来記述資料により主張されてきた労働市場と小作争議との関連性を,府県パネルデータを用いて定量的に検証したこと,(2)労働市場と小作争議・中農標準化(農業再編)を統合的に把握したこと,である。
- 2008-01-25
著者
関連論文
- 農地の流動化と集積をめぐる論点と展望
- 小作争議の郡パネルデーター分析 : 群馬、岐阜、京都、岡山を対象に (菅壽一教授退職記念号)
- 書評 友部謙一著『前工業化期日本の農家経済--主体均衡と市場経済』
- 小作争議の府県パネルデータ分析--1915〜29年日本の労働市場と農業再編
- 開発経済学からみた自治村落論
- 小作料減免慣行と取引費用
- 農地の流動化と集積をめぐる論点と展望
- 日本における戦時期農地・農地政策関係資料(15)
- 日本における戦時期農地・農地政策関係資料(14)
- 日本における戦時期農地・農地政策関係資料(13)
- 臨時農地等管理令に関する基礎研究 : 臨時農地管理令第3条・第5条・第7条を中心に
- 日本における戦時期農地・農地政策関係資料(12)
- 日本における戦時期農地・農地政策関係資料(11)
- 日本における戦時期農地・農地政策関係資料(10)
- 日本における戦時期農地・農地政策関係資料(9)
- 日本における戦時期農地・農地政策関係資料(8)
- 日本における戦時期農地・農地政策関係資料(7)
- 日本における戦時期農地・農地政策関係資料(6)
- 日本における戦時期農地・農地政策関係資料(5)
- 農地調整指導員について
- 西田美昭,アン・ワズオ編, 『20世紀日本の農民と農村』, 東京大学出版会, 2006年1月, viii+299頁, 6,090円
- 高橋満著, 『地主支配と農民運動の社会学』, 御茶の水書房, 2003年2月, vii+219+ix頁, 5,400円
- 林宥一著, 『近代日本農民運動史論』, 日本経済評論社, 2000年9月, iv+353頁, 5,200円
- 島袋善弘著, 『現代資本主義形成期の農村社会運動』, 西田書店, 一九九六年七月, 二五三頁, 三八〇〇円
- 換地選定をめぐる利害対立と合意形成 : 新潟県新発田北部地区の事例
- 小作争議の府県パネルデータ分析 : 1915〜29年日本の労働市場と農業再編
- 開発経済学からみた自治村落論
- 小作料減免慣行と取引費用