近世期直轄市場の連動と統合 : 大坂堂島米会所と大津御用米会所
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概要
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本稿は,江戸幕府直轄市場である大坂市場,大津市場を取り上げ,両市場の価格連関を検証するものである。近世期における米価の地域間連動については,物価史研究と呼ばれる一連の研究が既に検証を試みているが,そこで用いられた米価系列は,年次あるいは月次といった低頻度のものであり,江戸・大坂間を4日から9日,大坂・大津間を1日という速度で情報伝達が行われていた当該期における米価連関の速度を捉えきれているとは言い難い。これに対して本稿は,原史料から新たに復元した日次の米価系列に基づいて,大坂,大津両市場の米価連動を,とりわけ先行遅行関係から捉えることを試みた。その結果,18世紀末から19世紀前半にかけて,大坂市場の米価が,翌営業日の大津市場に反映されていたことが明らかとなった。これは飛脚が1日遅れにて,大坂米価を大津市場へ伝達していたことを反映している。一方,19世紀半ば以降,情報伝達技術が進化していく中で,両市場間の連動は,もはや1営業日という時間すら必要とせず,同営業日中に完了する程の速さに達していたことが明らかになった。
- 2009-09-25
著者
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