<特集論文>グリーン・イノベーション論
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概要
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本稿は「ロスト近代」という独自の時代認識から,グリーン・イノベーション(環境技術革新)と呼ばれる一連の政策を思想的に評価する試みである。「ロスト近代」の概念については,別に論じる用意がある。本稿はこの概念装置にしたがって,前半ではビジョン,後半では政策について,それぞれ論じたい。 前半で検討するのは,電力供給の長期的なビジョンである。現代のグリーン・イノベーションは,「第三次産業革命」という新たな段階において,自律分散型の性質をもつものとして位置づけられる。政策的には,「マイクロ・ジェネレーション(エネルギー供給)」や「脱中心的なエネルギー・システム」を理念としており,そのビジョンを一言で表現すれば,「自律分散型の人工市場システム」となるだろう。例えば,電力供給の自由化,送電業と発電業の分離,自然エネルギーの買取価格制度などは,このビジョンによって最もよく導かれるだろう。またそのビジョンを思想的に最もよく担保するのが,「自生化主義」である。 この思想的なビジョンを見極めつつ,後半では,政策として必要な方向性,および,地域の取り組みについて検討したい。環境税や市場プル戦略,あるいは優先接続などの政策は,自生化主義の理念によって体系的に喚起されるだろう。このビジョンを練り上げるなかで,地方自治体に期待される役割についても,一定の示唆を与えたい。
- 2012-03-30
著者
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