「治癒」としての暴力と非暴力(<特集I>暴力と人間)
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概要
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本論では、マーティン・ルーサー・キング、マルコムX、フランツ・ファノン、マハトマ・ガンディーという、いまだ私たちの暴力についての基本的枠組みを形成している20世紀を代表する人々の議論をとりあげ、それのはらみもつ意味について考察を加える。キングやガンディーの非暴力についての考え方から導かれるのは、まず暴力と力を概念的に腑分けすべきことである。現代において、暴力をめぐる議論を混乱させているのは、力そのものを暴力と混同する傾向であり、それによって従来「非暴力」とみなされていた民衆による実力行使すら暴力に分類する支配的動向を支えている。次に、暴力と「敵対性」の概念を区別する必要である。それによって、キングとマルコムXのように対極とみなされていた暴力や非暴力についての議論も、共通の地平と分岐点を明確にできるだろう。最後に、ファノンの提起した「治癒」としての暴力というショッキングなテーゼを検討する。そこから理解されるのは、暴力を肯定するにしても否定するにしても、これらの理論家/実践家に共通する理解は、力の行使が、心身の複雑な相互作用を伴うトータルな現象であるということである。
- 2011-06-30
著者
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