理論の外へ、もしくは<対話>としての社会学(<特集II>演繹的社会学の「復権」)
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概要
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社会学における華々しい「パラダイム闘争の時代」はもはや過去のものとなり、今日では「多パラダイム併走の時代」とでも呼ぶべき状況を迎えている。イデオロギー論争は下火になり、勢いパラダイム間の垣根もかつてに比べてはるかに低くなった。そうしたなかで、あたかも「事実性の解明(と、それにもとづく啓蒙)」こそが社会学の役割であるかのような合意が、社会調査士資格や社会学教育の標準化の議論を通じて学会内に醸成されつつある。そして、帰納と演繹をめぐる方法論的議論も、「事実」を一義的に確定することができるとする実証科学的認識論に依拠しているという点で、そうした動向と親和性をもつ。だが、社会学的な「事実」とは、そもそも研究者の実践と当事者の実践とが複雑に絡み合うなかで歴史的・状況的に生成される多義的なものではなかっただろうか。この報告では、当事者視点の導入が理論にもたらす揺れや緊張に着目する(帰納的でも演繹的でもないような)新たな<対話>的パラダイムを提起したい。
- 2010-05-29
著者
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