環境のヘゲモニーと構造的差別 : 大阪空港「不法占拠」問題の歴史にふれて(<特集>環境をめぐる正当性/正統性の論理-時間・歴史・記憶-)
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概要
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この論文は,<環境問題の社会学>と<環境共存の社会学>といった本学会内に存在する研究対象の棲み分けを根本から問いなおすことをめざしている。そのさい,私たちが着目するのは,環境をめぐる支配の正当性(ニヘゲモニー的支配の状態)とマイノリティの人権ないし差別問題との関係性についてである。環境社会学研究者によるこれらの問題群の取り上げ方をみてみると,二つの棲み分け領域のうち,とくに前者において,こうした問題が言及される比重が圧倒的に大きく,後者においては,逆に,これまでのところほとんど取り上げられてはこなかった。これは,いったい,どうしたことだろう。後老の領域において,差別や人権問題は存在していないのだろうか。この点について,以下では,大阪空港の「不法占拠」問題を検討することをつうじて,後者の領域において用いられている概念装置(<慣習>,<環境の言説>)や諸理論(コモンズ論や共同占有権論)が,<歴史的なもの>の隠蔽をつうじて差別の生産や再生産に加担し,結果として,マイノリティの権利を否定する側に与してきたことを指摘する。そうして,上記のような研究対象の棲み分け自体が,後者の領域において,研究者が差別問題を取り上げたり言及したりしないことの正当化として機能してきたのみならず,「環境的正義」の二面性,すなわち「環境的正義」の論理のなかに,構造的差別の芽が胚胎している可能性を見逃してきたことをあきらかにしていく。
- 2005-10-25
著者
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