A-3 山城経営学における『対境関係』の現代的意義(自由論題)
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概要
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今研究の目的は、第一に、山城章博士が示した「対境関係の原理」及び「パブリックリレーションズの形成」理論に一定の考察を加えて、これら理論の独自性・先進性を明確にすること、第二に、そこで提示された「企業観」について現代の企業経営の課題を考えるなかで再評価を試みることである。山城経営学における「対境関係の原理」は、1960年代に経営自主体としての企業のあり方とともに提示された原理であり、その後の企業と社会の関わり、企業の社会的責任などを論ずる上でも、有効な概念である。山城博士は、その原理の根幹を「パブリックリレーションズの形成原理」という理想型に集約し、企業を取り巻く環境を「利害関係者間の利害の調整と協調を個別的関係にとどめず、全ての対境主体間の関係に発展させる」と捉える視点を提示するなど、当時としては先見的な経営理論を構築した。特に1990年代以降、株式会社の企業統治研究から派生した様々な理論との関係、具体的には、利害関係者論(いわゆるステークホルダー理論)との比較などを通じて、山城理論の先進性は一層明確となり、山城経営学の対境関係に基づく「企業観」は、現代の企業経営にとどまらず、現代社会の原理としても有効性を持つ。本報告では、対境理論に関する上記の観点から(1)「地域社会」における対境関係のあり方、(2)個別利害者集団としての労働組合との対境関係、(3)ステークホルダー理論における企業観との比較、などの考察を通じて、山城経営学の対境理論がもつ現代的意義を論じる。
- 2012-06-21